NaNi EXECUTION LAB
LEARNING 設備と保全

設備と保全

学習時間目安:約90分

テーマ8:設備と保全の理解

学習週:Week 11
優先度:支援(品質・納期に直結する隠れた要因)


1. 設備台帳の設計

設備台帳に含める情報:
  ① 設備番号(一意の識別子)
  ② 設備名称・型式・メーカー
  ③ 導入年月・設置場所
  ④ 担当工程・対応品番
  ⑤ 定格能力(精度・速度・負荷)
  ⑥ 主要部品の交換サイクル
  ⑦ 保全担当者
  ⑧ 保全マニュアル参照先

2. 保全の種類と使い分け

種類説明使いどころ
事後保全(BM)壊れてから対処ダウンタイムが安い・代替設備ある
時間基準保全(TBM)一定周期で定期交換部品寿命が予測可能な箇所
状態基準保全(CBM)状態を監視して判断センサーで状態が取れる箇所
予知保全(PdM)データで劣化を予測IoT・AI活用。高価値設備に適用
改良保全(CM)設備を改良して再発防止繰り返し故障する箇所

3. 故障・停止の記録と分析

3.1 記録すべき情報

故障記録:
  発生日時 / 発見者 / 設備番号 / 故障内容 /
  停止時間 / 対応者 / 処置内容 / 再発防止策 /
  部品交換の場合:交換部品名・数量・費用

3.2 停止要因の分類

① 故障(予期しない停止)
② 計画保全(予定された停止)
③ 段取り・調整(品種切替)
④ 材料待ち(上流の問題)
⑤ 品質不良による停止
⑥ 操作ミス

3.3 OEE(設備総合効率)の算出

OEE = 可用率 × 性能率 × 品質率

可用率 = (計画稼働時間 − 停止時間)÷ 計画稼働時間
性能率 = 実際の生産量 × 標準サイクルタイム ÷ 実稼働時間
品質率 = 良品数 ÷ 総生産数

世界クラスの目安:OEE ≥ 85%

4. 設備状態と品質の関係

設備劣化が品質に与える影響の例:

スピンドル軸受の摩耗 → 主軸の振れ増大 → 加工径のばらつき増大
刃物の摩耗 → 切削力増大 → 寸法変化・表面粗さ悪化
クランプ力の低下 → 加工中のワーク動き → 寸法誤差
温度管理不良 → 熱変位 → 高精度加工の精度低下

5. 予知保全の実装概要

① センサー設置:振動・温度・電流・音響
② データ収集:IoT GatewayでPLCデータを取得
③ 正常モデル作成:正常稼働時のデータでベースライン設定
④ 異常検知:ベースラインからの逸脱を検出
⑤ アラート通知:保全担当者への自動通知
⑥ 保全指示:CMRSへの作業指示作成

推奨参考資料

種別タイトル用途
書籍★Introduction to TPM Seiichi Nakajima(1988)TPMの原典。OEEの概念もここから
論文Integrating AI and IoT for Predictive Maintenance(MDPI 2025)最新の予知保全技術論文
論文Predictive maintenance survey(PMC 2024)ML手法と計画モデルのサーベイ

✅ 実務チェックリスト

このテーマを「理解した」と言えるための確認項目

  • OEEの3要素(可用率・性能率・品質率)をそれぞれ実測値から計算できる
  • 自工場の主要設備のOEEを算出し世界クラス(85%)との差を把握している
  • 設備の6大ロス(故障・段取り・チョコ停・速度低下・不良・立上り)を分類できる
  • 自主保全の7ステップを順に説明できる
  • 故障データから平均故障間隔(MTBF)・平均修復時間(MTTR)を計算できる

💡 ETO製造での適用ポイント

ETO製造では段取り替えの頻度が高いため、OEEの「可用率」低下の主因が段取り時間になりやすい。SMEDの考え方(内段取りの外段取り化:設備を止めている間にしかできない作業を最小化する)が特に効果的。段取り時間の削減はETO工場でのOEE改善において最大のレバーになることが多い。

多品種少量のため「設備別の稼働データ収集」が後回しにされがちだが、センサー+IoTによるリアルタイムOEE計算はDX化後の効果測定に不可欠。「DX投資後に設備稼働率が何%改善したか」を示せなければ、追加投資の承認を得ることが難しくなる。

予知保全(PdM)の適用対象は「突発停止による影響が大きい設備(ボトルネック工程・長いリードタイムの工程)」から優先すると費用対効果が高い。全設備に一律に適用しようとすると、導入コストが膨大になる。スコアリングによる優先設備の選定が重要だ。

ETO特有の課題として、設備の使用パターンが案件ごとに大きく異なるため、「設備の異常状態」の定義が難しい。正常時のデータが案件ごとに異なるため、異常検知モデルの学習データを案件をまたいで収集・整理する仕組みが必要となる。


🔗 関連テーマ

テーマなぜ関連するか
AI/予知保全(テーマ12)OEEデータと振動・温度データがPdMの入力となる
記録情報設計(テーマ10)設備稼働記録の設計はトレーサビリティに必要
KPI(テーマ16)OEEはDX効果を測定する代表的な製造KPI