背景
製造業DXの現場で積み上げてきた実行知見が、個人の経験として埋もれたままになっていた。
- 業務で構築した仕組みや自動化ツールを外部に共有できる場がない
- 技術力を客観的に示す媒体がない
- 継続学習を促すアウトプット先がない
これらの課題を一度に解決するため、「サイト自体がDX実行事例」 という思想のもと、個人技術サイトを構築することにした。
要件定義
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 公開コスト | 完全無料(有料サービス使用時は事前確認) |
| 更新頻度 | 週1回・Markdown編集レベルで非エンジニア作業 |
| デザイン | 高級感・ビジネス寄り・企業サイト水準 |
| 対応端末 | PC + スマートフォン必須 |
| 個人情報 | 極力出さない(公開連絡先はメールのみ) |
| コンテンツ | 製造業DX実行事例・学習ロードマップ・便利ツール |
技術スタック(月額 ¥0)
┌─────────────────────────────────────────────┐
│ フロント Astro v6 (SSG) + Tailwind v4 │
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│ CMS Content Collections (Markdown) │
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│ ホスティング GitHub Pages │
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│ デプロイ GitHub Actions(自動) │
├─────────────────────────────────────────────┤
│ 画像 Unsplash CDN(無料商用可) │
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│ 開発 Claude Code(AIペアプロ) │
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| 技術 | 採用理由 |
|---|---|
| Astro v6 | SSG + Islands Architecture。SEO完璧・ページ速度最高・Markdownネイティブ |
| Tailwind v4 | 設計一貫性・学習コスト小・Astroとの親和性 |
| GitHub Pages | 完全無料・カスタムドメイン対応・Actions直結 |
| Unsplash CDN | ローカル保存不要・高品質・商用OK |
| Claude Code | 設計〜実装〜デバッグ〜デプロイを対話一貫で完結 |
Claude Code との開発プロセス
従来の「要件定義書 → 設計書 → 実装 → テスト」という分断されたフローをやめ、対話型で一気通貫 に進めた。
自然言語での要求
│
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┌──────────────────────┐
│ Claude Code │
│ ・設計案の提示 │
│ ・コード生成 │
│ ・ビルド検証 │
│ ・git commit / push │
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本番環境(GitHub Pages)
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ブラウザで動作確認
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差分指示 → ループ
典型的な対話例
「ROI計算ツールを追加したい。製造DX向けに」
→ 削減工数・不良件数・クレーム件数・受注増を入力して投資対効果を即時計算する設計でいかがですか?
「いいね、それで」
→ 実装して本番デプロイしました。/roi-calculatorで確認できます
この粒度の対話を繰り返しながら、初期版から69ページ構成まで拡張した。
構築した機能・コンテンツ
NaNi Execution Lab(69ページ)
├── TOP / ABOUT
├── 事例(11件)
│ ├── 製造DX実行事例(品質・在庫・OEEなど)
│ ├── AI自動化事例(GAS・n8n・Claude API)
│ ├── ゲーム開発事例(Canvas+JS・3,468行)
│ └── 家計簿PWA(Gemini OCR + GAS)
├── ブログ(10本)
├── LEARNING(製造DX学習ロードマップ・16週4フェーズ)
├── 用語集(42語・クライアントサイド検索)
├── Tools(7ツール・全クライアントサイド動作)
│ ├── 役員提案書ジェネレーター(映画演出付き)
│ ├── Mermaid ⇄ ビジュアルフロー双方向エディタ
│ ├── JSON / CSV 変換
│ ├── QRコード生成
│ ├── 正規表現テスター
│ ├── タイムスタンプ変換
│ └── Cron式ビルダー
├── DX成熟度診断(20問)
├── ROI計算
└── ツール比較(MES / ERP / PLM)
映画級演出システム
BaseLayout.astro に 11層の視覚エフェクト を組み込み、全ページに自動適用。
| # | 効果 | 実装手法 |
|---|---|---|
| 1 | 初回訪問スタジオロゴ演出 | sessionStorage + CSS keyframes |
| 2 | オープニング黒カーテン | 固定オーバーレイ + 透過アニメ |
| 3 | 上下レターボックス黒帯 | fixed height:38vh + transform |
| 4 | フィルムグレイン | SVG Turbulence + mix-blend-mode:overlay |
| 5 | 周辺減光ヴィネット | radial-gradient |
| 6 | マウス追従スポットライト | pointermove + RAF + lerp(0.12) |
| 7 | 浮遊ダスト粒子 | Canvas + 40粒子 + twinkle位相差 |
| 8 | オーロラ背景 | 3層 radial-gradient + 30秒ループ |
| 9 | フィルムストリップ進捗バー | scroll% + 8px tick pattern |
| 10 | 文字バラ撒きアニメ | TreeWalker + spanラップ + IO連動 |
| 11 | 画像スキャンラインreveal | IO + gold streak transform |
サーバーレス・完全静的サイトでも Canvas + CSS + IntersectionObserver だけで映画水準のUXを実現できることを証明した。
工数とAI活用の効果
| フェーズ | 推定工数(人間のみ) | 実際の工数(AI活用) | 短縮率 |
|---|---|---|---|
| 技術選定・環境構築 | 16時間 | 2時間 | 88% |
| ベースレイアウト設計・実装 | 24時間 | 4時間 | 83% |
| コンテンツ69ページ作成 | 80時間 | 12時間 | 85% |
| 映画演出・インタラクション | 40時間 | 6時間 | 85% |
| 7ツール実装 | 30時間 | 5時間 | 83% |
| デバッグ・品質向上 | 20時間 | 4時間 | 80% |
| 合計 | 210時間 | 33時間 | 84% |
従来なら数ヶ月かかる規模の成果を、実質2週間・33時間相当で実現。
ハマりポイントと解決
Astro v6 の破壊的変更
- src/content/config.ts
+ src/content.config.ts # ファイル位置変更
- entry.slug
+ entry.id.replace(/\.md$/, '') # API変更
- entry.render()
+ import { render } from 'astro:content'; render(entry)
base URL の内部リンク問題
GitHub Pages の base: '/nani-execution-lab' 設定時、Markdown内では ${base} が解釈されない。
→ [リンク](/nani-execution-lab/path/) のようにbase接頭辞をハードコード必須。
GitHub Actions の Node バージョン
# 失敗: Astro v6 は >=22.12.0 必須
node-version: '20'
# 成功
node-version: '22'
QRコード CDN の読込不安定
qrcode@1.5.4 の jsdelivr CDN が不安定だったため、qrcode-generator@1.4.4(純ES5・依存ゼロ)に切り替えて解決。
最終メトリクス
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 総ページ数 | 69ページ |
| 本番公開までの日数 | 初期版まで 2日 |
| 全体構築期間 | 約 2週間 |
| 事例コンテンツ | 11件 |
| インタラクティブツール | 7個(全クライアントサイド) |
| 学習ロードマップ | 16週×4フェーズ・19ファイル |
| Lighthouse Performance | 95+ |
| Lighthouse Accessibility | 100 |
| Lighthouse SEO | 100 |
| 月額運用費 | ¥0 |
| ビルド時間 | 約 6〜8秒(全69ページ) |
学んだこと
1. AIペアプロは「設計」から始める
「コードを書いて」より「この構成でどう思う?」から入ることで、より良いアーキテクチャが生まれる。
AIは実装者でなく 設計パートナー として最も力を発揮する。
2. 静的サイトでも映画水準は実現できる
重要なのはライブラリの多さではなく 演出の設計。Canvas・CSS・IntersectionObserverだけで高級感あるUXは実現できる。
3. 失敗も発信資産になる
- Streamlit Cloud のデフォルト Python バージョン問題
- GAS URL の公開漏洩リスク
- Node.js バージョン起因のビルド失敗
これらの「ハマりポイント」こそが、次の誰かに最も役立つコンテンツになる。
4. サイト自体を「実行事例」にする
このサイトで紹介しているDXの思想——動かしてから磨く・仕組みを継続改善する・失敗も記録として外部化する——をサイト自体の構築で実践した。
製造業DXと個人サイト構築は、思ったより共通点が多い。
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このサイト自体が、この事例の成果物です。