背景
プラント向け特殊機器を製造するETO製造業。受注1件ごとに仕様が異なり、製造中の設計変更が月平均20件以上発生していた。設計変更の通知は担当設計者からのメール連絡に依存しており、伝達漏れや遅延が慢性的な問題になっていた。
設計変更が製造に届くまでの平均リードタイム:5日間。この間に旧仕様での加工が進み、手直しが発生することが多かった。変更起因の手直し損失は年間推計で約800万円。
課題
- 設計変更のメール連絡が関係者全員に届かないケースが月3〜5件
- 連絡が届いても確認済みかどうかを追跡する手段がない
- 設計→購買→製造の経路が別々のメールチェーンになり、版管理が困難
- 変更が有効化されるタイミングが現場に伝わらず、旧図面での作業継続が発生
これらの問題の根本は「メールが通知ツールとしては機能するが、管理ツールとしては機能しない」点にある。
ソリューション
既存のPLMシステム(ファイルサーバー+Excel台帳の組み合わせ)からCSVエクスポートされる変更記録を、Pythonスクリプトが定期的に監視する仕組みを構築した。
技術構成:
- PLM(Excel台帳)への変更登録をトリガーに、Python監視スクリプトが新規変更を検知
- 変更番号・変更内容・影響範囲・有効化条件を構造化したJSONペイロードを生成
- MESシステム(生産管理)と購買管理Excel(SharePoint上)へWebhook経由で通知
- 通知と同時に確認受付フォーム(Microsoft Forms)URLを生成し、各部門担当者にメール送信
- 全担当者が確認フォームを送信した時点で「変更確認完了」フラグをPLM台帳に自動更新
開発工数: 設計2週間、実装・テスト1週間、計3週間(1名)
工夫した点:
- 変更の影響範囲(図面・BOM・工程・調達・検査・在庫)を6項目のチェックリストとして必須入力化
- 有効化条件(「製番〇〇以降」「〇月〇日以降」)を構造化フィールドとして強制入力
- 未確認部門が72時間以内に確認完了しない場合、上位者(課長)へエスカレーション通知
結果
| 指標 | Before | After | 改善率 |
|---|---|---|---|
| 変更処理リードタイム | 5.0日 | 1.6日 | 68%短縮 |
| 変更起因の手直し件数 | 月平均6件 | 月平均1.5件 | 75%削減 |
| 手直し損失(年間) | 約800万円 | 約350万円 | 450万円削減 |
| 確認漏れ件数 | 月3〜5件 | 月0〜1件 | ほぼ解消 |
導入後6ヶ月で投資を回収。現在は新品種の設計変更フローにも展開されている。